【完】スキャンダル・ヒロイン
「おいッ!静綺ッ……」
振り返ると、両こぶしを握り締めて体中震えあがり、鋭い瞳を向けてこちらを睨みつける真央の姿。
これが通常運行。優しい顔を見せる方が珍しい程。昨日からそうだけど、真央は昴さんに相当コンプレックスがあるらしく、皆が昴さんをチヤホヤすればするほど不機嫌になっていく。
確かに昴さんは完璧な人だけど、真央にだって真央にしかない良い所はあるんだけど。
「俺の飯は?!」
「後で作るから大人しくしててよ。何怒ってんのよ……」
「大体なんだお前?!昨日から昴への態度と俺への態度が違い過ぎる!」
そりゃー手放しで優しくされたら誰だってそうなるでしょうよ。少なくともあんたみたいに昴さんは私へ悪態はつかないじゃないか。
「何よその言いがかり。」
「まさかお前?!昴の事が好きなのか?
この間昴が寮に来た時かっこいいとかほざいてたもんな?!」
だからどうして話がそう飛躍するのよ。
「お前が昴と釣り合うとでも思ってんのか?!」
「まさかあわよくば昴がここで暮らし始めると知って狙ってんのか?!」
「昴の周りには綺麗な女優や可愛いアイドルが沢山いるんだぞ?」
「お前の事なんか相手にするか!」
だからまあよくベラベラと勝手な妄想話を作り上げれるってもんよ。
しっかしムカつくな…。良い奴なんて少しでも思った自分が馬鹿だったわよ。
かっこいい…なんてときめいて、横顔から目が離せなくなってしまったのは、花火のせいだったかもしれないわね。あれはムードにやられただけなんだ。
本来はこういう最低な男だったのを思い出した。