【完】スキャンダル・ヒロイン

「はい。今日聞きました。喜んじゃって。台本見せられて本読みまで付き合わせられましたよ。見事に下手糞って罵られましたけど」

「はは、あいつらしい。そっかー…俺の本読みの練習も付き合って欲しいくらいだけどー…」

「私で良ければ全然」

「主にキスキーシがあるラブシーンに困っててさ」

さらりとそう言って退ける昴さんを前に、キッチンの壁に思わず頭をぶつけてしまう。

くくッと意地悪な笑みを浮かべてお腹を抱えると、「付き合ってくれる?」と意地悪そうに言った。

天真爛漫で優しい癖に時たま真っ黒い表情を浮かべる。白馬に乗った王子様だとばかり思っていたけれど、案外腹黒い所がある。

こっちの反応を見て楽しんじゃってさ…。

「それにしても残念だなー。この間瑠璃さんと皆で海かプールに行きたいねって話をしてたんですけど、真央もドラマ撮影で忙しくなりそうだし」

「あ、いいな。俺も全く夏らしい事してないからどこかに行きたい!」

「でも昴さんは売れっ子だし忙しいからもっと無理でしょう?」

「大丈夫大丈夫。どこか空きの時間作ってさ。皆で遊ぼうよッ。真央も予定合わせて貰ってさ」

「いいんですか?!」

「ん~?そうだなぁ~…キスシーンの練習、付き合ってくれたらね」

そう言ってバチっとこちらへ向かってウィンクをする。この~…黒王子め。

「昴さんって冗談ばっかりなんだから。」

その手にはもう乗らない。皆のお茶を抱えて持っていこうとした時、ふいに昴さんの手が私の手に触れた。

今度はさっきまでの意地悪そうな笑みではなくって、テレビで見せるような甘い笑みだ。
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