【完】スキャンダル・ヒロイン

「真央と昴が用意してくれたの」

「え?!」

ニコニコと笑う昴さんと、どこか照れくさそうにそっぽを向く真央。

「静綺ちゃん、ちょっと早いけど誕生日おめでとう!」

2と2のろうそくに火が灯って、皆でバースデーソングを口ずさむ。思わず涙ぐみたくなるサプライズだった。

「履歴書を見返したら今月の終わりが静綺ちゃんの誕生日だったから。
それを言ったら昴と真央がケーキを用意してくれたの」

「えぇーッ…本当に嬉しい。ありがとう。昴さん、真央も」

「べ、別にお前の為じゃあ…!」

「静綺ちゃんこのケーキは真央がどういうデザインにしたいかってお願いして作って貰ったものなんだよー!
苺やベリーが沢山のって美味しそうでしょー?
それにこのピンクのバラのクリームも真央がパティシェさんにお願いしたんだー。案外ロマンチストでしょ?」

「昴……お前、殺すぞ?」

湿っぽくなるのは嫌だったから笑顔でお別れをしたいと思っていた。けれどこんなサプライズは反則だよ。

その後も夜中になるまで皆で笑い合って沢山話をした。最初は不安だらけでこのアルバイトは断ろうと思った。なんて場所に飛び込んでしまったのだろう、と。

でもそこに居た自分とは違う世界の芸能人たちは…私が思っていたよりずっと親しみやすくて、そして人間らしかった。


本当は寂しかった。
このまま……大学が始まってもここで暮らせたらいいのに。まだまだ皆と一緒に過ごしたかったのに…。

皆引き止めてくれた。大学から通えない距離じゃない。でも自分の中でけじめをつけたつもり。
< 312 / 347 >

この作品をシェア

pagetop