かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
『ふー、我ながらいい仕事した! これなら誰も私たちが入れ替わってるなんて気づかないでしょ?』
『うん、そうだね……くれは、素直にすごいと思う』
『お褒めに預かり光栄です~』


うたうように言って、くれはがニッコリと笑う。

……変なの。顔は私なのに、やっぱり笑い方はくれはだ。

ネイビーのハイウエストワンピースに、髪はルーズシニヨン、普段の戦闘力高めメイクではなくナチュラルメイクを施したくれはは、パタンとメイクボックスを閉じ立ち上がる。


『それじゃあ、そろそろ行かなきゃね。ことはもタクシーなんでしょ?』
『うん。お父さんが送ってくれるって言ったんだけど、さすがにバレそうで断った』
『あはは、私も』


笑い声をこぼし、同じく立ち上がった私をくれはがじっと見つめた。


『ごめんね、ことは。私のワガママに付き合わせちゃって』


彼女らしくない、思いのほか硬い声音。

一瞬目を丸くしてから、私は微笑んだ。


『何言ってるの。私がやるって言ったんだよ』


迷いのないこちらの返事を聞いて、ふっと表情が緩む。

彼女が身につけているものの中で唯一私の私物ではない、アメジストが控えめに揺れるチェーンピアスが、くれはのうなずきに合わせてキラリと輝いた。
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