かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
内心で私がそんなことを考えていることを知らない奥宮さんは、ひとつ咳払いをしてから改めて私と目を合わせる。


「立花さん。勝手ながら、あなたのことはこちらで少し調べさせてもらいました」
「え」


『あなた』──つまりくれはのことを、調べた?
それっていわゆる、聞き合わせというやつ?

突然告げられたセリフに呆然としてしまった私に構わず、奥宮さんが淡々と続ける。


「どうやらお父上は、本当に私の要望通りの娘さんを引き合わせてくれたようだ。……初対面の相手にも物怖じせず、身なりもそれなりに気を遣うことができて、私とそれほど歳も離れていない愛想のいい女性が、私の望む“妻”の条件だったので」


淀みなく語られるその話の内容は、たぶん、お見合いの席で話すにもおかしくないものだった。
だけど私は、自分の中でどうにもふつふつと沸き上がってくる感情を抑えられない。

だって──気づいてしまったのだ。

このひとは、“立花くれは”個人を見てくれているわけじゃない。
ただ、“自分の理想に添った相手”だったから、機械的に会話をしているだけ。

条件とやらを羅列する声音は何の熱も感じられず、向けられる眼差しもどこか冷めている。
そんな彼の態度を受けて芽生えたのは、静かな怒りだった。
ひざの上で握りしめたこぶしに、力がこもる。
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