かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
どうしよう……一度強い態度を取ってしまった手前、ものすごーく、気まずい。

後ろめたさからしばらく無言でテーブルに落としていた視線を、そろりと上げてみる。

するとこちらを見つめていたらしい奥宮さんとしっかり目が合ってしまい、思わず「ひっ」とか細い悲鳴をこぼしながら身体を震わせた。


「っく……」


私の反応がおもしろかったのか、奥宮さんが口もとにこぶしをあてて小さく笑い声を漏らす。

そのまま小刻みに肩を揺らして笑い続ける彼へ、私はおそらく羞恥で真っ赤になりながらうらみがましくジトリと半眼を向けた。


「奥宮さん……?」
「ごめん、かわいいなと思って。さっきからきみの反応、ウサギか何かの小動物みたいだから」
「はぇ……?!」


突然の『かわいい』発言にまたぼぼっと顔が熱くなる。奥宮さんは動物に対して使うようなノリで言ったんだろうけど、免疫がない私は大混乱だ。


「そんなに動揺しなくても。これくらい言われ慣れてるだろうに」
「な……慣れてなんかないです! あ、あまり、からかわないでください」
「からかってるつもりはないんだけど。俺は正直者だから、思ったことは言うよ」


奥宮さんはそんなことを言って、ゆったりとした笑みを浮かべている。

なんか……さっきからこのひと、最初と全然印象が違う……!!
写真で見たときは、王子様っぽい、なんて思って。
いざ会ってみたら、なんだか冷たいイメージで。
だけど今、少し意地悪だけどやわらかく細めた目で私のことを見つめながら、甘い言葉を吐いている。

奥宮さんによっていいように翻弄されている私の心は、ずっとドキドキしっぱなしで休まる暇がない。
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