かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
というか私たち、さっきの険悪ムードが嘘のように普通に会話をしている気がする。

でも考えてみれば、私の今日のミッションはすでに達成しているようなものなのだ。お互いさまとはいえ、あんな失礼な態度を取ってしまったくれは()を奥宮さんも妻にしようとは思わないはず。

だからもう、必要以上に緊張する必要はないのかも。開き直って、あとは“いいとこでのティータイム”を満喫することにしよう!


そうこうしているうち、注文のケーキセットとホットコーヒーが席に届く。

ポットから注ぎたてのあたたかくていい香りのアールグレイをひとくち飲み込むと、また少し気持ちが落ちついた。

奥宮さんもコーヒーカップに口をつけたのを見届けてから、いそいそとフォークを手に取る。

うわぁ……美味しそう……。
目の前の皿に乗ったケーキを前に、自然と頬が緩む。

セットのケーキは、スタッフが席まで持ってきてくれたトレーの中から好きなものをひとつを選ぶシステムだった。
5種類ある中から私が選んだのは、いちごのショートケーキ。オーソドックスだからこそ、めったに来ることがない高級店のものを味わってみたい……!という思いでチョイスしたのだけど、あまりのおいしさに衝撃を受けて一瞬固まってしまった。

定番の三角形ではなく綺麗な層を重ねた長方形のフォルムに、ぽってりとした大粒の赤いいちごが鎮座している。
スポンジはしっとりふわふわ、クリームはほどよい甘さで、濃厚なのに全然くどくない。
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