かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
信号が青に変わり、車が発進する。

なんとか間を持たせなければと、急いた気持ちで話題を探した。


「あ……あの、奥宮さんは、国産車がお好きなんですか?」
「ん?」


苦し紛れで私が発した問いかけに、奥宮さんは穏やかなトーンで続きをような相づちを打つ。

私は一度だけそっと深呼吸をしてから、また口を開いた。


「えと、勝手なイメージなんですけど、社長さんて外国の車に乗ってるイメージがあって……ああもう、すみません、ほんとに勝手な想像ですね」


自分で話題を振っておきながら落ち込んだ。話のネタとして、あんまりにもお粗末すぎる。

だけど奥宮さんは気分を害した様子もなく、むしろ楽しげに返してくれる。


「まあ、外車も嫌いじゃないけどね。この車に決めたのはのっぴきならない事情があって」
「……のっぴきならない事情?」


もったいぶった言い方に興味を引かれ、思わず横顔を見つめる。

ウィンカーを出して十字路を左折しながら、口角を上げた奥宮さんが続けた。


「友人が、ここのディーラーに勤めてて。有り体に言えば、カモにされてる」


キッパリ堂々とそんなセリフが返ってきて、一瞬ポカンとしてしまった。

だけどすぐに、笑いが込み上げる。


「ふふっ、カモって……奥宮さん、自分で言っちゃうんですか」
「言うね。本人にも堂々と宣言されてるから」
「あはは……っお友達さん、正直ですねぇ」
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