かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
モッツァレラチーズがとろりとこぼれ落ちてしまう前に、パクンと思いきってあつあつのピザを頬張る。

瞬間、自分でもわかるくらい目を輝かせた私に、テーブルの向かい側に座る奥宮さんが笑みを浮かべた。


「どう?」


未だ口いっぱいに幸せな味を堪能している最中の私は、片手で口もとを抑えながら声には出さずコクコクと何度も首を縦に振る。

少し遅れようやくごくん、と飲み込んでから、興奮のまま声を上げた。


「とっってもおいしいです……! これはもう、このマルゲリータは今までに食べた中で1番に躍り出ました……!」
「ははっ、それはよかった」


熱く語った私の言葉に、奥宮さんは楽しげな様子で笑い声をこぼす。

私もつられた笑顔のまま、我慢できずにまた次のひと口を頬張った。


奥宮さんがランチにと連れてきてくれたこのトラットリアは、こじんまりとした外観ながらもインテリアやメニューにこだわりを感じるセンスのいいお店だった。

意外と言っては失礼だけど、歴史を感じながらも思いのほかアットホームな佇まいのこのお店は、どうやら奥宮さんの行きつけらしい。マスターとも顔を合わせるなり、親しげに会話をしていた。

華やかな容姿と肩書きを併せ持つ奥宮さんは、きっと普段から高級そうな食事をしているんだろうなあ──なんて勝手なイメージを持っていた私は、一体どんなハイクラスなお店に連れて行かれるのかと実は内心ビクビクしていたんだけど……親しみやすいカジュアルな雰囲気の、しかも大好きなイタリアンのお店だったことに、ひそかに安堵したのだ。
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