かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「うれしいですねぇ、そんなふうに言ってもらえるのは」
気づけば私たちのいるテーブル席の傍らへ、この店のマスターであるロマンスグレーの紳士が笑顔でやって来ていた。
マスターは重ねてきた経験を感じる落ちついた声音で本当にうれしそうに言ったかと思うと、持っていたパスタの器をテーブルへと置いてくれる。
「うわあ……!」
目の前に現れたパスタを見て、声を抑えつつもつい歓声を漏らしてしまう。
奥宮さんがこの店のイチオシだと教えてくれた、ワタリガニのトマトクリームパスタ。ソースが絡んだパスタの上に鮮やかな赤い色の大きなカニがどどーんとまるごと載っていて、視覚的にもなかなかにインパクトのある一品だ。
「おいしそう! あの、マルゲリータも、本当においしいです……! お世辞でも何でもなく、今まで食べた中で1番です!」
「ありがとうございます。そう言っていただけて何よりうれしいです」
「マスター、そのうれしい感想を言ってくれる彼女をここに連れてきた俺のことを、褒めてくれてもいいよ」
奥宮さんがイタズラっぽく会話に参加する。
マスターは心得ているとばかりに、片手を胸にあてニッコリ微笑んだ。
「もちろん。これだけ付き合いが長い中で初めて智遥くんが連れてきてくれた女性がこんなに可愛らしくて素敵ないい子で、僕も安心したよ」
「……なんか、褒めるのとは違くないか?」
どこか不満そうにつぶやく奥宮さんにマスターはまた笑みを深くすると、一礼してカウンターの向こう側へと去っていく。
私はといえば、マスターの話にあった“初めて連れてきてくれた女性”というワードにひそかに心臓をはねさせながら顔を熱くしていたりするんだけど、あえて自分からそのことを訊ねたりはしなかった。
気づけば私たちのいるテーブル席の傍らへ、この店のマスターであるロマンスグレーの紳士が笑顔でやって来ていた。
マスターは重ねてきた経験を感じる落ちついた声音で本当にうれしそうに言ったかと思うと、持っていたパスタの器をテーブルへと置いてくれる。
「うわあ……!」
目の前に現れたパスタを見て、声を抑えつつもつい歓声を漏らしてしまう。
奥宮さんがこの店のイチオシだと教えてくれた、ワタリガニのトマトクリームパスタ。ソースが絡んだパスタの上に鮮やかな赤い色の大きなカニがどどーんとまるごと載っていて、視覚的にもなかなかにインパクトのある一品だ。
「おいしそう! あの、マルゲリータも、本当においしいです……! お世辞でも何でもなく、今まで食べた中で1番です!」
「ありがとうございます。そう言っていただけて何よりうれしいです」
「マスター、そのうれしい感想を言ってくれる彼女をここに連れてきた俺のことを、褒めてくれてもいいよ」
奥宮さんがイタズラっぽく会話に参加する。
マスターは心得ているとばかりに、片手を胸にあてニッコリ微笑んだ。
「もちろん。これだけ付き合いが長い中で初めて智遥くんが連れてきてくれた女性がこんなに可愛らしくて素敵ないい子で、僕も安心したよ」
「……なんか、褒めるのとは違くないか?」
どこか不満そうにつぶやく奥宮さんにマスターはまた笑みを深くすると、一礼してカウンターの向こう側へと去っていく。
私はといえば、マスターの話にあった“初めて連れてきてくれた女性”というワードにひそかに心臓をはねさせながら顔を熱くしていたりするんだけど、あえて自分からそのことを訊ねたりはしなかった。