かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
彼の申し出に思わず固まってしまう。

魅力的すぎるお誘いではあるけれど、気軽にうなずいていいものだろうか。だって本当の立花くれはは、お酒が全然飲めないのに。

そもそも、奥宮さんが“次の約束”を口にしてくれるのは──この入れ替わりの目的を、私がまったく果たせていないことになる。

……そうだ。私は、このひとに拒絶されなければいけない。
今さらな事実のはずなのに、改めて思い出したらなぜかズキンと胸が痛んだ。

突然顔を曇らせた私の様子に、奥宮さんは何か他の理由だと受け取ったらしい。また少し苦い笑みをみせた。


「もしかして、警戒してる? 夜の約束はまだダメかな」
「あ……」


違う、とも言えず、ただ目を泳がせる。

すると彼は、気を取り直すようにコツンと人差し指で私の目の前のテーブルを小突いた。


「わかった、じゃあこうしよう。ワインは、夜じゃなくてまた休日の昼間に来て楽しもう。それなら許してくれる?」


パッと顔を上げると、優しげな微笑みをたたえた奥宮さんと目が合う。

……『許してくれる?』、だなんて。本当はそんなふうに、言ってもらえる立場じゃないのに。

だけどずるい私は、それ以上何も話せない。また視線をテーブルに落としながら、ただ小さくこくんとうなずいた。
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