かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「お膝痛いよね。早くアイスのところに行きたかったのに、邪魔しちゃってごめんね。泣くの我慢できて、強いなあ。アイス見ると、うれしくなっちゃうよね。美味しいもんねぇ」


こわがらせないよう、なるべく優しい声音でゆっくり話しかけながら、持っていたバッグの中を探る。

そうして見つけたものを親指と人差し指でつまみ、男の子の前に掲げてみせた。


「じゃーん! 恐竜、好きかな?」


私が笑顔で取り出したのは、恐竜のイラストが描かれた絆創膏だ。

きょとんとした表情の男の子の手を取って、ニコニコ笑顔を崩さないまま小さな手のひらにそっと載せる。


「これをお膝にペタンしたら、すぐ痛いの飛んでっちゃうからねー。そうしたらまた、元気に歩けるよ」


そこでようやく、男の子がぎこちない笑みをみせてくれた。


「あ……ありがとう、おねえちゃん」
「わあ、上手に『ありがとう』言えるんだね。どういたしまして!」


たどたどしいお礼のセリフにキュンとしながら、私も笑顔で言葉を返す。

やり取りを見ていた女性が男の子の肩に手を載せながら申し訳なさげに、けれどもどこかホッとした様子でこちらを見た。


「本当にすみません……! ありがとうございます」
「いえいえ。どちらにしろ先に傷口を洗わなきゃいけないとは思うのですが、使っていただけたらうれしいです」
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