かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
その後、雑貨屋や飲食店などいくつかのアルバイトを経験したくれはがたどり着いたのが、現在働いているフラワーショップだ。
“お花屋さん”は幼い頃くれはがよく口にしていた夢のひとつで、実際に勤め出してすっかりその魅力に取り憑かれてしまったらしい。

大変なことも少なくないけれどやりがいがあると、ブラックな激務に毒されていたあの頃とは比べものにならないキラキラした笑顔で言っていた。今はまだアルバイト店員だけど、最近では本格的にフローリストを目指した勉強もしているのだ。

対する私は短大を卒業してからそこそこ大きな商社に就職し、事務員としてあまり刺激のない平凡な毎日を送っている。
彼氏なんてものはもうずっといなくて、短大生だった頃にひとり付き合っただけ。それも私の内気で常に受け身な性格のせいか、あまり長くは続かなかった。

そんな私と違い、明るく人懐っこいくれはは友達も多いし、これまでに付き合った男性の人数もそれなりにいる。
けれどここしばらく、そういった機会はないみたい。今は仕事が楽しくて恋愛をする気になれないんだと、少し前に聞いた。


「そんなに心配しなくても、きっと大丈夫だよ。くれはが今の仕事を大事にしたいことを伝えれば、相手の人だってわかってくれるから」
「うー、ことはぁ……」


大好きな妹。大切な片割れ。
そんなくれはがいいひとと出会えて幸せになれるなら、こんなにうれしいことはない。

お父さんだってきっと、仕事に打ち込んでボロボロになったくれはを知っているから、あんなふうに言うんじゃないのかな。そういう気持ちをちゃんとストレートに伝えないから、いっつもふたりはすれ違っちゃうんだと思う。
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