かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
でも……こんなに本人が嫌がっているのに、お見合いなんてするべきなのかな。

自分だって当事者のくせにくれはのことばかり考えてしまうのは、同じ日時に産まれたとはいえやはり自分が“姉”だからなのだろうか。


そんなふうにぼんやりしていたら、突然くれはが勢いよく顔を上げて驚いた。

髪を撫で続けていた右手をビクッと震わせた私に構うことなく、涙を浮かべながらもどこか据わった目をしたくれはがとんでもない発言をする。


「──わかった。私たち入れ替わろう、ことは!」
「へ……?」


驚きに固まる私の口から漏れたのは、なんとも間抜けな声だ。

そんな私を前に、くれははさらに言葉を続ける。


「お母さんは呑気なこと言ってたけど、私たちの方から破談にするのはきっとお父さんが許さないでしょ? だから私はことはのフリ、ことはが私のフリをして、お見合い相手に会うの。あからさまに嫌われるような言動をするのはマズそうだけど、なんとなーく『思ってたのと違うな』って相手に思わせて向こうから断るように仕向けるのはアリじゃない?! ていうかぶっちゃけ、このまま大人しくお父さんの言いなりになるのは癪だから、どうにかして反抗したい!!」
「なっ、ちょ……ちょっと待ってくれは、そんなの無理だよ……!」


何を言い出すかと思えば、お見合いで入れ替わる?!

突拍子なさすぎる提案に、動揺を隠せない。つまりは、お父さんへの抗議ってことでしょ?!
くらくらしてきた頭を押さえるように両手をこめかみにあてながら、私は即座に拒否を示した。

けれどもくれはは、すっかりその気になっているようだ。困惑する私なんて目もくれず、顎に片手をやりながらブツブツと何事かつぶやいている。
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