かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「赤いな。やっぱり、酔ってるみたいだ」
「……そう、ですね……」


意地悪だ。この顔の火照りは、アルコールのせいではないと気づいているくせに。

それでも私は否定したりせず、含み笑いでこちらを見ている奥宮さんに若干恨めしげな視線を向けながら再度メニューに手を伸ばした。

結局その後私はティラミス、奥宮さんはアフォガートをデザートに選んで、バイトとして入っているらしい大学生風の若い男の子に伝える。

まあでも、たしかに……奥宮さんは私の知らない美味しいお酒をいくつも知っていて、気になったものをあれもこれもと注文しているうち、少し飲みすぎてしまったかもしれない。

しかもここは小さいお店ながら大好物のチーズの種類も充実していて、ついついグラスを口に運ぶ手が進んでしまう。こちらも奥宮さんがイチオシしてくれたペコリーノとそら豆を和えたものは、本当に悪魔的美味しさでいけなかった。

ひと口頬張った瞬間、幸福と飲みすぎる予感の狭間で葛藤しながら「奥宮さん……これは危険なやつです……あっという間にボトルが空いてしまうやつです……」と思わず噛みしめるようにつぶやけば、奥宮さんは今までで1番無邪気に顔をくしゃっとさせて笑う。

そして私がその笑顔にまたまんまと胸をときめかせてしまったのは、言うまでもない。
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