かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「ふわぁ……美味しい……溶けた……」


お待ちかねのティラミスもまた、幸せをぎゅっと凝縮した味がした。
ココアパウダーとマスカルポーネチーズのクリーム、エスプレッソコーヒーがたっぷり染み込んだフィンガービスケットが、舌の上で絶妙に溶け合う。コクがあるのに全然重たくなくて、散々お酒と料理を堪能したあとにもかかわらずペロリと平らげてしまいそうだ。

最初のひと口の感激にうち震える私を、同じくスプーンを手にした奥宮さんが可笑しそうに眺めている。


「立花さんはすごく美味そうに食べるけど、食レポには向いてないよな。感動に比例して語彙力が消失するから」
「ええぇ? ひどいなあ、私だって本気を出せば……こう、えっと、ふわんっとして、とろっと広がって、その、……とても美味しいです!」
「うーん、3点」
「さんてん?!」


口振りのわりにまったく悩む様子もなく超低得点をはじき出され、不満を飛び越えていっそ思いきり笑えてきた。顔を見合わせ、ふたりでくすくすと笑い合う。

アルコールが入っているおかげか必要以上に緊張せずに、さっきからなんだかすごく気安いやり取りができているように思う。
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