かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「また今度、マスターともゆっくり話せるときに来たらいいよ」
「そう……ですね。あの、今回もごちそうさまでした。ごめんなさい、私たくさん食べて飲んじゃったのに」


閉じたドアを名残惜しげに見つめていた私の様子に、奥宮さんが気を利かせて声をかけてくれる。

私は曖昧に笑いながらうなずくと、彼にもお会計のお礼を伝えた。


「誘ったのは俺だし、気にしないで。楽しかった?」


やわらかな眼差しと声音を向けられ、私は大きくうなずく。


「楽しくて美味しくて、今とっても満たされてます」
「よかった。俺もだ」


その言葉と表情に、きゅんと胸が高鳴る。

すると奥宮さんは、なぜかそのまま無言でじっと私のことを見つめてきて……ドギマギしつつも、訳がわからず首をかしげた。


「奥宮さん……? どうか、しましたか?」
「ん? うん」


答えになっていない相づちを打ち、ふわりと口もとを緩める。

  
「立花さんの澄んだ目にネオンが映ってキラキラして、綺麗だなと思って」
「っえ、」
「それにきみだってしょっちゅう俺の顔を穴があきそうなほど見てるときがあるから、仕返し」


イタズラっぽくそんなことを言われて、思わず目をまたたかせた。

そうしてすぐ、かーっと頬が熱を持つ。
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