かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
……今まで奥宮さん本人に突っ込まれたとき以外にも頻繁にこっそり見つめていたこと、バレてる。

可笑しそうに細めた眼差しを私に向けている奥宮さんは、その私の行動に気分を害している様子はなさそうだけど……それにしたって、恥ずかしい。

私は照れ隠しのため、わざと拗ねたように唇を尖らせる。


「もしかして、奥宮さんも結構酔ってます?」
「ん? うーん、ははっ、どうだろうね」


私の反応をあからさまに面白がっている彼は、いつもより上機嫌に見えた。

火照った頬に両手をあて、熱を逃がすように息をつく。


「……さっきの私の目がキラキラして綺麗だってセリフ、さすがにキザですよ」
「そう? なるほど、立花さん的にはお気に召さなかったか。今後の参考にしとく」


……『今後の参考』って、なんですか。

それに、気に入らなかったなんてひとことも──なんてことを考えかけて、我に返る。

いけない。なんだかすっかり、奥宮さんのペースだけど……私はこれから、入れ替わりの件を告白しようと思っているのに。こんなふうに振り回っされっぱなしで、ドキドキがおさまらない。


「タクシーでもいいけど、酔い醒ましがてら少し歩こうか」と言われ、逆らうことなくうなずいた。

近くの駅までは約15分ほどだ。歩幅を合わせてくれる奥宮さんと言葉を交わしつつ、ゆるやかなペースで並んで歩く。
酔い醒ましのはずが、いつの間にか大きな手に片手を包み込まれ、少し抑え気味の音量で話す奥宮さんの穏やかな声を聞いているうち、私の頭はまたふわふわしてきた。

やっぱり今の私は、自分でも思う以上に酔っているんだなあ。

正直に自分の嘘を明らかにしようとしていて、もう二度と、奥宮さんとは会えないかもってわかってるのに──今このときがうれしくて、無意識に顔が綻ぶのだ。
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