東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
「これは君の字か?」

「は?」
そんなわけないでしょ、違いますと全力で否定しようと口を開いた時。

「うわっ」と素っ頓狂な声をあげた野呂が、驚くほどのす早い手さばきで、彼からファイルを取り上げた。

「す、すみません! ちょ、ちょっと手違いが」

手違いとはなんだとはなんのことやら。
野呂は気まずそうに、せわしなくパチパチと瞬きをしながら何度も頭をさげて、息をひそめるようにそぅっと腰をおろした。

苦しい言い訳を口走るところをみると、彼にも一人前の恥の概念はあるということなのだろう。

呆れる思いで思わず苦笑を浮かべ、ちらりと見上げると、副社長は益々眉間の皺を深くして野呂を睨んでいた。


「野呂、会議室に来て」
ふいにそう声をかけたのは課長だった。

「あ、ああ、はい」

課長は頭をさげ、彼を促すように会議室に向かう。
続いて入っていくのは広報部長。

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