東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
ただし、それだけに理想は高かった。

「たまたまカウンターで隣に座って、あとから彼がひとりで来て、ひとつ空けた隣に座ったんだけど、その時私が落としたハンカチを拾ってくれたのよ。
膝の上にかけていたんだけど落ちちゃったのね。その時、ニッコリと微笑んだ笑顔がものすごく素敵でつい『おひとりですか?』って。
彼は『ええ』って。ちょうど私のグラスが空になって、そしたら彼が注文がてら彼女にもって。楽しかったのよ、エステシャンだって話になって彼、興味ありげに色々聞いてくれて」

「へえ、絵に描いたような出会いじゃない」

ベタすぎる出会いだとも思う。
もしや仕組まれた出会いなのかと疑いたくなるほどに。

「うん、ここまではね」と桃花は眉をひそめて不貞腐れたように肩を落とした。

「『鏡を見て出直せよ』だって」

「え?」

パスタを絡めていた指先が止まる。


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