東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
トレードマークのような微笑み(嘘くさい笑み)を浮かべて女性と話をしていた彼は、チラリと叶星を見ると、「失礼」とかなんとか女性に断りをいれ振り返った。

――え? うそ、来るの?

まさかと動揺している間に逃げそびれた。

叶星の前に立ち止まり、軽く首を傾げた東堂副社長はニヤリと口元を歪める。

「君もいるとはね」

文章にすればどうということはないのだろう。

でも、言葉尻には思い切り"なにか"を含んでいるように、叶星の耳には聞こえた。

口元も目元もこの先の言葉を言いたくてうずうずしているようにも見える。
たとえば『なんでお前がここにいるんだよ。場違いなんだよ』とか。

何しろ彼の狂暴な本性をこの目で見たのだ。もう騙されない。

――鬼め。
向こうに行ってくださいよ、話しかけないでください!
負けじと全身でそう訴えながら、口元だけにニッと笑みを浮かべた。

「ご招待頂きましたので」

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