東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
これでもう、桃花や友達にお金があることを隠さなくても良い。
一気に気持ちが軽くなった叶星は五月の空のように晴れ渡っている。


営業の女性と廊下で別れた叶星は、誰もいない広報部に入った。

今日は全員朝からイベントに駆り出されいる。

「さ、仕事仕事」

留守を任されている叶星は、雑用の合間に電話番をしなければいけない。
これが何気に大変だ。

メモを取り、それぞれの担当者にメールで知らせるだけだが、相手の名前を聞き間違ってもいけないし、場合によっては正確に用件を聞きとらなければならないので否が応でも緊張する。

電話応対用のメモを目の前に置くと、早速ルルルと電話が鳴った。

「はい、広報部です」

何本か立て続けに取ったあと、一本の厄介な電話があった。

『野呂さん宛のお電話なんですが、お急ぎのようで。大丈夫ですか?』

受付から回ってきたその電話は、取る前から嫌な予感がした。

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