元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
「申し訳ありませんでした」
杏奈は座っている瑠衣に向かって深く深く頭を下げた。
「よせよ」
慌てて瑠衣が立ち上がり杏奈の方に近づく。
「いえ。大切な初めての会議の場で間違ったデータの資料とは気づかずお渡ししてしまったのは私のミスです。今後は社長の手に渡る前に必ず確認いたします。申し訳」
そこまで言ったところで瑠衣が深々と下げている杏奈の頭に手を置いた。
「会議室で、俺に知らせようとしてくれたんだろ?」
「でも本来ならば事前に確認が」
思わず顔をあげた杏奈の前には、無防備に微笑む瑠衣がいた。

昔と変わらないその微笑み。

「杏奈」
変わらない声で名前を呼ばれていることがまだ夢なのではないかと思ってしまう。
「これから一緒にがんばってほしい。もう十分わかっていると思うけど、俺を歓迎してくれる社員は誰一人いない。敵だらけだ。だから杏奈も嫌な思いをいっぱいするかもしれない。ごめん。俺に力がないからだ。」
杏奈よりも頭一つ分は背が高い瑠衣は、杏奈と視線を合わせるために姿勢を低くしている。
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