元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
5年間。瑠衣と離れてから母を失いたくはないという必死な想いと、瑠衣との温かな思い出に救われながらなんとか乗り越えてこれた。

「早くおいで」
母の声に杏奈は病室の入り口で立ち止まっていた自分に気が付いた。
「うん」
骨と皮の状態のやせ細った手で母が杏奈を手招きして、ベッドに座らせる。
「あなたちょっと痩せたんじゃない?」
「そうかな」
「そうよ。無理してない?ごめんね、母さんのせいで」
「何言ってんのよ。今仕事が楽しくて仕方無いんだから。」
杏奈は笑顔を作りながら母に言う。
「無理して笑って。この子は」
細くてすぐに折れてしまいそうな手で、杏奈の頬を撫でる母。
そんな母の手の温かさに杏奈は泣きそうだった。

今だって不安だ。

私をのこして逝かないでといつもいつも願っている。
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