捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
「お前に俺は殴れない」

「そんなことな――」

 言い終える前に涼さんが大きく足を踏み出した。

 ぎくりとした私へたった一歩で距離を詰め、壁に手をつく。

(……!)

 この体勢には覚えがある。三年振りの再会を果たしたとき、ホテルで私にキスをしたときと同じだ。

 そんな余計なことを思い出したせいでかっと顔が熱くなる。さっき耳を噛まれたのもよくなかった。

「ほ、ほんとに引っぱたくから」

「それでもいい」

 そっと壊れ物を扱うように頬を包み込まれたかと思うと、こつんと額が重なった。

「殴られるだけでキスできるなら安い」

「――!」

 奪うようにキスをされて全身に力が入った。顔を背けたくても頬に添えられた手が固定してきて動けない。

(ずるい、ずるいずるいずるい――)

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