捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 こんなに素敵な人から食事の誘いを受けていたなんて。よくこれまで顔を直視できていたものだ。意識してしまった今、間近で見たら眩しすぎて視力が落ちる気がする。

 そのあとのことはよく覚えていない。今日から社長の恋人になるという事実で頭がいっぱいになり、初めてデザートの感想が言えなかったくらいだ。

 けれど、家まで送ってくれたあとのことは覚えている。

 ひとり暮らしの小さなマンションの前で場違いな高級車から下ろされた私は、初めて社長と社員ではなく、恋人としてこの人と別れようとしていた。

「ふたりでいるときは名前で呼んでもいいか?」

「あ……はい」

 緊張しながら答えた私の頬に、社長がそっと触れてくる。

「……翠」

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