捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 甘い低音が、特別な響きを持って愛おしげに私の名前を囁く。きゅうう、と胸の奥で変な疼きを感じたのも束の間、社長の顔が近付いて――。

「――っ」

 目尻へ落ちたキスは、一瞬で私の身体から力を奪ってしまった。倒れそうになったのをぎりぎり堪え、なんとかその場に立ち続ける。

「お前も涼でいい。……ずっと呼ばれてみたかったんだ」

 その言葉に目を丸くする。

 社長――涼さんとの付き合いはそこそこ長くなっていたけれど、こういうふうに自分の欲求を伝えてきたのは初めてだった。

 それに気付いた瞬間、勝手に言葉が口をついて出てくる。

「じゅ……準備、できました」

 今夜はひとりにしてほしくないと強い願いが私の中に生まれ、言葉にしきれないものを伝えるように涼さんのジャケットを掴んでしまう。

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