捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 助手席から身を乗り出し、涼さんに顔を近付ける。

 この行為に意味なんてない。好きだからするわけじゃない――。

「みど――」

 顔を寄せる私の名を、また涼さんが呼ぼうとした。

 その唇を塞いで、すぐに離れる。

「……信号、変わったよ」

 信号が青くなったのを合図に前方の車が走り出す。涼さんは絶句したまま、ひとまず車を発進させた。

「翠」

「なにも言わないで」

 膝の上で手を固く握り締める。

「……なにも、言わないで」

 声が震えた。

「……わかった」

 涼さんはいつものように私の希望を聞いてくれた。聞きたいことはたくさんあるだろうに、本当になにも言わず車を走らせてくれる。

 胸が痛い。痛くて苦しい。いっそここで死んでしまいたいと思うほどに。

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