捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 その気持ちを引き裂いたのは、ほかでもない涼さん自身だ。

「あなたが来いって言ったんでしょ。卑怯な手を使って」

「なんとでも言え」

 ぐっと手を掴まれて部屋の中へ引きずり込まれる。

 閉じたドアの内側に背中を押し付けられたかと思うと、顔の真横に大きな手が置かれた。

 ぎょっとしたのも束の間、顔を寄せてきた涼さんが囁く。

「……翠」

(っ……!)

 たったひと言だけで、とっくに消えたと思っていた気持ちがよみがえる。この男にこれ以上近付いているのは危険だと頭の中で警鐘が鳴ったけれど、もう遅かった。

 三年前と同じように、そっとついばむようなキスが落ちる。

(あ……)

 だめだ、と思った。

 でもそのときにはもう、頬を涙が伝っている。

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