捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 涼さんはもう一度口を開きかけて、きっと言おうとしたであろう言葉を飲み込み首を横に振った。

「お前の欲しがっていたものが俺ではないとわかったからだ」

「どういう意味?」

「今更昔の話を蒸し返すなと言ったのはお前じゃなかったか?」

 答えを濁してそっぽを向いた横顔は、やっぱり鳴の面影を残している。

「……それもそうね。なら、もう聞かない」

 普通の夫婦のように、婚姻届を提出した喜びになんて浸らない。夫となった人を振り切るように役所の出口へ向かって歩き出す。

「これで今日の仕事は終わりよね。それじゃ」

「帰るのか?」

「当たり前でしょ。用事は済んだんだから」

「まだ昨日の続きが残っているだろう」

 え、と声を上げる間もなく手首を掴まれる。

< 70 / 462 >

この作品をシェア

pagetop