捨てられママのはずが、愛し尽くされています~冷徹社長は極上パパ~
 く、とお腹の奥に力を入れて涙を強引に引っ込める。ちょっとだけ涼さんの胸に顔を押し付けて、頬に落ちたしずくを拭わせてもらった。

 再び顔を上げて、そっと肩を押しのける。

「……外でこういうことをしないって約束して。私たちは本物の夫婦じゃないんだから」

 素直にありがとうと言えない自分を嫌いになる。傷付くことを避けるために選んだのは、傷付けることだった。

「ついさっきしてきたことを忘れたのか? 役所に婚姻届を提出してきただろう。これで本物じゃないなら、なにが本物なんだ」

「ちゃんとお互いに愛し合う夫婦を本物の夫婦って言うの」

 本当はこの胸にすがって甘えたかった。これまでひとりで大変だったのだと吐き出して、よく頑張ったと褒めてもらいたかった。

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