ウルルであなたとシャンパンを
声を絞り出そうと息を吸うと、くすっと小さく笑う吐息が耳に届いた。
『起きたんだ?』
「う、うん」
『よく眠れた?』
笑いを含んだルカの声は、記憶にある穏やかさで、どこか楽しそうにも聞こえた。
低く響くその声に、ちょっと肩透かしを食ったような気分になりながらも、香耶は短く返事をする。
「はい……あー、多分」
くすくすと笑うルカの声に不安が和らいでいくのを感じながら、ほう、と胸をなでおろすと、今度は次の言葉にぎょっとすることになった。
『ホテルに着いたんだけど、部屋に行ってもいい?』
「……えっ?!」
『これからシャワー浴びるとかなら、待つけど』
「いや、シャワーは浴びたけど……」
『じゃあ、行くね』
「えっ、あっ……、ちょ、待っ……」
行くから下で待ってて、とか、準備するから出直して、とか。
断りの言葉が入る余地もなく、プツン、と通話が切れて……数秒間の空白の後、ハッと我を取り戻した香耶は今の自分の恰好と散らかった部屋を見回した。
「片づけなきゃ!あっ、その前に着替え……あ~もう!来るのが早いってば!どうしてこんなに散らかしたのよ?あたしのバカ!」