ウルルであなたとシャンパンを
できうる限りのスピードで散らかった荷物をを片付け、慌てて手にした服を身に着けて、コンコン、という音に振り向いた時には、シャワーを浴びてさっぱりしたはずの体が少し汗ばんでいた。
「は、はい!」
ノックの音に大きな声で返事をして、用心のため、駆け寄ったドアを少しだけ開けて見ると、両手に紙のカップを持ったルカがくすくすと笑いながら立っていた。
「元気そうで、良かった」
どうやら勢い込んで返事をしたのが面白かったらしいルカは、笑いをこらえるようにしてそう言った。
何か言い訳をしたかったけれど、何を言うこともできず、恥ずかしさに香耶がもにょもにょと口を動かしながらチェーンを外すと、廊下に立ったまま、ルカは手にしたカップを軽く上げる。
「こっちがミルクと砂糖入り、こっちは無し」
どっちがいい?と言うように視線を送られて、ミルク入りの方を指さすと、まだ熱を感じる大き目のカップを受け取った。
そのまま自然と渡されたコーヒーに視線が落ちると、その向こう側をスッと何かが横切って。
え?と顔を上げた時には、頬に軽く何かが触れていた。
「え……?」
「おはよう、カヤ」
何が起こったのか、状況が飲み込めずに動きを止めて目を見開いた香耶の額に、そっとルカの指先が触れる。