【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 今日は王都の騎士たちと合同でモンスターの討伐をおこなっている。
 アイスベルクと王都の間には、大きな川と森がある。いつもはアイスベルクの騎馬隊たちが見回りをして、王都へ続く道を守っているのだが、ここ最近モンスターが活発化している兆しがあり、王都の騎士団と合同で討伐することになったのだ。

 森の奥から、大きなどよめきが聞こえた。撤退の怒号が響く。オレ達はそちらに向かう。
 たぶん、王都の騎士団がいると思ったのだ。数の多いモンスターを弓で射ながら先へ進む。地響きと雄叫びが聞こえた。
 氷の壁に火を吐くサラマンダー。その前にはわが領地のお嬢様ベルン様。その上に庇うように、一人の騎士が重なっている。

 オレはそれを見てカッとした。
 オレたちは一斉に矢を射る。
 雨のように降り注ぐ弓矢に、サラマンダーが怯む。その隙を狙って、ベルン様に魔法を分け与えてくれるよう願う。

 キラキラと光る氷の粒。武骨な矢じりを覆い、美しいものに変えてしまう。何度見ても惚れ惚れとする。ベルン様だから産み出せる魔法。憧れて恋焦がれる、オレには決して手に入らない大きな魔力。
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