【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 炎を吹き出すサラマンダーに、氷の矢が降り注ぐ。次々とその肉に矢が刺さり、サラマンダーは悶える。
 そして、ベルン様を庇っていた男が、息も絶え絶えに起き上がり、矢をつがえた。銀色に光り輝く矢じりに、ベルン様の氷がまとわりつく。幻想的な美しさに息を飲んだ。
 この男もベルン様と同じだ。美しい魔力を持っている。

 ヒュンと音を立てて風を切る弓矢、サラマンダーの額に矢が撃ち込まれ、炎と氷と共にサラマンダーは倒れた。

 倒れ込んだ騎士を抱きかかえ、ベルン様が必死に助けを請うた。我を忘れる姿など、ここ数年見たことはなかった。
 美しくきらめく金糸の髪。熱のために赤らんだ顔は、それでも恐ろしいほどに整っている。
 チリリと胸が焼けるのを感じた。知らない男がベルン様の腕に抱かれている。
 そして、その騎士がスノウの主だと知り、息を飲む。

 彼は、この国の第二王子、シュテルンヒェン・フォン・ミルヒシュトラーゼ殿下であった。
 そう、ベルン様をこの領地から奪った男、愛らしいベルン様をあろうことか男に間違え、フェルゼン様と一緒に幼年学校へと連れ去った男だったのだ。

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