【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 ベルン様を庇って受けた背中の傷は重症で、治療のために騎馬隊本営に連れ帰った。重症ということや、王子ということもあり、特設のテントを用意した。予断を許さない状況で、ベルン様が付きっ切りで看病をした。
 その様子を見れば、この王子がベルン様にとって、ただの騎士団仲間ではないことが想像できた。
 ベルン様だったら、誰にでも等しくそうしたかもしれないが。あの取り乱しようは並ではなかった。
 
 あのベルン様が泣いていた。
 めったに泣くことのないベルン様を泣かせた。

 オレは激しく嫉妬した。
 図々しくもベルン様の御手を煩わす男に。
 弱ったふりをして、必要以上に触れる男に。
 
 ベルン様を男だと思いながらも、欲しがる男に嫉妬した。

 だって、不幸にしかならないではないか。
 領地に戻ってさえ来れば、ベルン様はありのままで生きていける。
 騎士の格好でいようとも、淑女のドレスを纏おうとも、誰も何も言わない。
 だけど、コイツがベルン様を拘束するのなら、彼女はずっと男と偽り続けなければいけないのだ。
 それは、結ばれないことを意味する。男としても、女としても、幸せになれない。

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