【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「もう大丈夫です、姫」
「でも、まだ怖いわ……」
「おそばにおります」
「ベルンさま……」
ぎゅっと腰を抱き締められ、不味いんじゃないかなと心配する。一応、男女な訳だから。
侍女に目を向けたら、親指を立てて頷いた。
グッジョブじゃないから! まずいでしょ、嫁入り前の姫君が臣下と抱き合うとか!
「マレーネ姫様? そろそろ」
「もう少しだけ、お願い」
か弱い姫にそう言われて、引き離せるほど私は冷たくない。だけど、困ってしまって周りを見渡せば、クラウト以外はニヨニヨとしている。
クラウトは思いっきり睨み付けてきていた。そうだ、最近忘れてたけど、彼は王家過激派だった。シュテル同様マレーネ姫も信仰しているのだ。
視線がいたたまれなくなり、マレーネ姫の腕を外した。そして膝をつき、うつむく姫の顔に視線を合わす。
「不安なのは承知しております。しかし、ここでは人目がありますゆえ」
「あ……私ったら……」