【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
小さな声。それなのに、僕に与えた威力は大きかった。
最初から、出会う前から、ずっと知っていて、ずっと僕だけ隠されてた。
二人に騙されていた。
信じていた世界が崩れていく。
フェルゼンの胸ぐらをつかんでいた手を離した。
情けない。
自分が馬鹿らしくて笑えてくる。ずっと、仲間だと思ってた。何でも知っていると、何でも話してくれるって、この二人だけは他の人とは違うって、そう思っていたのに。
裏切られた。初めから信じられてなかった。
上に立つものとして、そんなこと初めてじゃない。よくあることだ。だけど、今回ばかりはきつかった。
「……僕が、……王子だったからか」
「違う」
フェルゼンは間髪開けずに答えた。