【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 この空を夜に近づけたら、ベルンの髪の色になる。

 そう思って空を掴む。当たり前だけど掴めない。なにもない掌を開いて、確認するように自分に向けた。太陽光が掌を通過して、指の周りが赤く光っている。
 まったりとした時間を過ごして、俺たちは帰りに向かった。

 上着を脱いだまま馬に乗る。少しゆっくりしてしまった俺たちは、来たときより早足で馬を進めた。
 先頭はベルンだ。
 ベルンの白いシャツが風をはらんで膨らむ。夕日の逆光の中、膨らんだシャツの中でベルンのシルエットが浮き上がった。俺たちと変わらない真っ直ぐな体だ。
< 405 / 408 >

この作品をシェア

pagetop