【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 舞踏会が終わった夜。寛いでいればベルンが帰ってきた。

 よそゆき用の銀の髪飾りを取って、オオルリの羽根のような髪を散らかす。その一瞬で部屋が華やぐ。髪を下ろした姿は男の時には見せない。シュテルにも見せない。
 無邪気にジャケットをヒラリと脱ぎ、タイを外す。白いベストも乱暴に投げ、スラックスの側章が足の長さを際立たせる。男の姿から、少女が一瞬だけ顔を出す。

 ドクリ、体の奥が波打つ。
 触れたい、そう焦がれる背徳感。

 でも、ダメだ。女として触れたらダメだ。側に居られなくなってしまう。

 幼年学校にベルンを入学させるために、アイスベルク家から俺に出された約束は二つ。

 一つ、ベルンの純潔を守ること。
 二つ、万が一ベルンの性別が露見した場合、ヴルカーン家は知らなかったとし、以降一切の交流を断つこと。

 破られてしまったら。もう二度と会うこともできない。
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