【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
二人を引き合わせたあの日、天使様と呼んだベルンの声。一目で愛称で呼ぶことを許した王子。
何かがはじまる瞬間だと、そう思わずにはいられなかった。
そんなのを見せつけられたら、胸の中が黒く煤けた。
ああ、今も。ベルンを困らす男に嫉妬する。あんな顔して話さないで欲しい。最近何かと距離が近い。ベルンを男と思っているはずなのに、男同士だから触れられる距離で、それ以上の熱を感じる。
ベルンのグラスに口づける男に嫉妬する。ベルンは気が付かない間接キス。ずっと俺が守って来たんだ。そんなに簡単に触れてくれるな。
俺は、新しいグラスをもってベルンの側に歩み寄った。男の姿だと遠慮している甘いものを持っていってやる。
俺だけが知ってるから、俺だけのやり方で、甘やかすのだ。
ベルンは嬉しそうに微笑むから、俺はそれに満足する。クールじゃない顔を知っている、その事に満たされた。