冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「わかったわ。支度が終わり次第向かいますと、お父様に伝えてくださる?」
リリーの返事を聞いた侍女のソフィアは使いとして寄越された衛兵に回答を伝えると、リリーの支度の仕上げを急いだ。
──ウォーリックの可憐な花。それは、リリーが持つ呼称のひとつだ。
今は亡き母ゆずりの緩くウェーブがかかったプラチナブロンドの髪は胸下まで伸びていて、絹糸のように繊細で美しかった。
シミひとつない白磁の肌はすべらかで、頬は淡い桜色に色づいている。
唇も同じだ。特段ぽってりとしているわけではないが、程よい厚みがあって色っぽい。
何より特徴的なのは、大きな目とオリーブ色に輝く宝石のような瞳だった。
見つめられると甘い引力のようなものを感じさせ、不思議と目が離せなくなってしまうのだと、リリーと顔を合わせたものは誰もが口々に賛辞した。
けれど肝心の本人は恵まれた容姿を鼻にかけることもなく、いつでも自然体で振る舞っていた。
先程も孤児院で子供たちとかくれんぼをして遊んだり、歌を歌ってみたりと、飾らない姿を見せてきたばかりだ。
むしろリリー本人は、会ったこともない人間からも『稀に見る美貌の持ち主らしい』などと噂されることは、有り難迷惑であるとすら考えていた。