冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「このドレスも、リリー様によくお似合いですわ」
支度をしながら、侍女のひとりがうっとりと目を細めてリリーを見上げた。
ベルベットの布地を基調に、華やかなレースとリボンがあしらわれたエレガントなドレスだ。
しなやかなラインと洗練されたシルエットは高貴さを際立たせ、リリーの華奢な身体を美しく彩っていた。
「ありがとう。お父様もそのように思ってくださるといいのだけれど」
けれど侍女の言葉に、リリーは曖昧な笑みを浮かべて答える。
孤児院へとおもむく際には軽装を心掛けているが、王宮内や社交の場では一切の気が抜けないのが今の王宮内での内実だった。
というのも、『上に立つものは常に高貴に着飾ってあれ』。それがリリーの父である国王の口癖だからだ。
言葉の通り、国王は常に一級品の衣服や調度品ばかりを身に着け、リリーにも同じように振る舞うことを指示していた。
そんなわけで国王は、リリーが孤児院へと行くことも快くは思っていない。
機嫌が悪いときには決まって、そのことをチクチク責めて、無意味なことだとリリーの行いを糾弾した。
『王女であるお前が、下々のものと馴れ馴れしくするなどは論外だ』
それでもリリーは、『上に立つものとして、しかるべき勉強だ』という理由で国王を説得し、もう五年も孤児院へと通い続けている。
けれど、それもいつまで持つかわからない。