冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(だからこそ、王宮内で粗相をしてお父様の機嫌を損ねるようなことだけは絶対に避けなければならないわ)
「リリー様、お支度が整いました」
悶々と思い悩んでいたリリーに、ソフィアの穏やかな声が掛けられた。
リリーはハッとして顔を上げると、鏡に映った自分を改めて見つめる。
鏡の中に映ったリリーは、父好みの贅を尽くした様相になっていた。
(……大丈夫。とにかく、どんなときでも弱気になってはダメ)
そうしてリリーは決意を固めるように拳を握って、「行きましょう」と告げてから、国王の待つ執務室へと向かった。
「──お父様、リリーでございます。お待たせしてしまい、申し訳ありません」
執務室に着き、優雅な仕草でドレスを持ち上げたリリーは国王に向かって頭を下げた。
ゆっくりと顔を上げれば金銀で彩られた豪華絢爛な室内に目が眩む。
国一番と謳われる職人たちを集めて作らせた美術品の数々は、大金を積んで用意されたものばかりだが、お世辞にも品があるとは言えなかった。
(昔から、この部屋は苦手だわ)
国王の、自己顕示欲をそのまま表しているかのような執務室は空気がよどんでいるように思う。
この場所に来るとリリーはいつも息苦しくなって、一秒でも早くここを去りたいと思ってしまう。