冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(あった……! あれが、騎士団の荷物を積んだ馬車だわ!)
まだ出発前ということもあり、人手はそんなに多くはない。
「おーい、こっちを手伝ってくれ!」
荷物を見張っていたひとりが、他の積荷を積みに動いた隙を狙って、リリーはすでに準備を終えていた馬車の荷台に乗り込んだ。
「我々の任務は、リアム様をグラスゴーより連れ戻すことだ!」
しばらくして以前聞いたことのあるダスターの掛け声が聞こえ、騎士団の面々がリアム奪還のための狼煙を上げた。
(大丈夫……っ。きっと、すべて上手くいくわ)
ガタガタと揺れる馬車の中で、リリーは精いっぱい見つからないように身を縮こませながら、リアムの無事を祈り続けた。
邸を出てからずっと、緊張で手が震えている。
けれど、リリーは深く息を吐いて自分を鼓舞しながら、改めて自身が成すべきことを頭の中で唱え続けた。
「よし。とりあえず、荷物は一旦ここに隠しておこう。グラスゴーの王宮の裏手から、順次、中の様子を探るために動き始めるとする」
そうしてしばらくして、馬車が止まった。
またダスターの支持を飛ばす声が聞こえ、それを合図に何やら外が騒がしくなる。
(グラスゴー王国に、着いたんだわ……)
荷台の影からこっそりと顔を出したリリーは周囲の様子を伺った。
どうやら、グラスゴーの王宮の裏手の森に、自陣を構える予定のようだ。
隊員が別の積荷の中身を確認しているすきに、リリーはこっそりと荷台から降りた。
「は……っ、ハァ……っ、ハッ」
そうして急いでその場を離れると、持ってきた野菜の入った荷物を背中に背負う。
リリーがグラスゴーの裏門付近までやってきたところで、商人が数人、王宮から出ていくのが見えた。
(今だわ……!)
これ以上ない、絶好のタイミングだ。リリーは承認のひとりを装い、フードを深くかぶると、思い切って門番の前に立った。