冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「おい、貴様! ここに何をしに来た!」

「も、申し訳ありません! 先ほど届けた野菜とは別に、まだ届けていないものがありまして、それを持ってまいりました」

「なんだと?」


 緊張で、ドキドキと胸は高鳴っている。

 門番のひとりはフードを被ったリリーの話を訝しげに聞いていたが、「ふんっ」と鼻を鳴らしてリリーの荷物を確認すると、意外にもすんなりとリリーを王宮内へと通してくれた。


「確かに、荷物は野菜だけのようだな。さっさと行け」

「は、はいっ。ありがとうございます!」


 なんだか、あまりにもあっさりとしすぎているような気もする。

 門番の態度にリリーは違和感を覚えたが、今はそんなことを気にしている余裕はないので、さっさと王宮の裏口から中へと侵入した。


「ふぅ……」


 広い王宮内。けれどここは裏側なので、若干の湿っぽさを感じる。

 フードを取ったリリーは改めて、これからやるべきことを頭の中で反すうした。


(まず、リアムが捕らえられているかどうかを確認しなければいけないわ。そのためには牢の場所を突き止めるか……王宮内の誰かに、事情を聞くしかなさそうね)


 けれど、リリーが立ち止まって思案をしていたら、


「あらぁ! あんた、見ない顔だわね!」


 突然、快活な女性に声をかけられた。


「え……っ」


 驚いたリリーが勢いよく振り向けば、使用人服に身を包んだふくよかな女性がふたり、リリーを物珍しそうに眺めていた。


「あんた、町から連れて来られた子かね」

「あ、あの、私は……」

「どうせ、またエドガーのバカ坊っちゃんが、城下で拾ってきたんだろう?」

「え……?」

「まったく、あの人は。今月に入って、あんたでもう六人目さ。次から次へと女に手を付けて、盛りのついた猿のようだよ」


 ふぅ、と息を吐いた使用人の女性は、「ああ、今のは聞かなかったことにしておくれ」と嘯いて、ケラケラと笑っていた。

 
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