冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「ああ、リリー。今日はお前に良い話があってな」
数ある調度品の中でも群を抜いて贅を尽くした椅子に座す国王は、そんなリリーの心情も知らずにニヤリと笑った。
「良いお話、ですか……?」
その国王の笑顔を見たリリーは、胸に蔓延る不安が深く色づくのを感じて息を呑んだ。
(なんだか、すごく嫌な予感がする)
そしてリリーのその予想は、次に告げられた父の言葉により現実となった。
「リリー。お前をグラスゴー王国の第一王子、エドガーのもとへと嫁がせることになった」
「え……。わ、私が、エドガー王子のお后に……ですか?」
思いもよらない話に、リリーの声は上ずった。
けれど国王は、リリーの戸惑いに触れることなく、声を弾ませながら話を続ける。
「ああ、そうだ。エドガーはグラスゴー王国の次期国王となる男。お前が嫁ぐ相手としては、申し分のない相手だろう」
白い髭を撫でながら、歪んだ笑みを浮かべる国王とは対照的に、リリーの表情は強張った。
グラスゴー王国は、ウォーリック王国の西側に位置する中級国だ。
規模や兵力、国益もウォーリックとほぼ対等だが、現国王は病床に伏せていると、最近風の噂で耳にしたばかりだった。