冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「でもさ、ラフバラの騎士団長様なんて捕えて、本当に大丈夫なのかね。大国・ラフバラを怒らせたら、それこそ大変なことになるんじゃないかって、私たち使用人の間じゃ噂されていて──」

「す、すみません! ありがとうございました!」


 使用人の女性たちに頭を下げたリリーは、転がるようにその場を立ち去った。

 そうしてリリーが真っすぐに向かったのはエドガーのもとではなく、たった今、女性たちに教えてもらった西側の地下牢だった。


(もしもリアムがそこに捕まっているのなら、どうにかして彼を逃がさなければ……!)


 地下牢への入口は、女性たちの言うとおりに歩いていったらたどり着くことができた。

 長い廊下の先。蝋燭の明かりだけが灯された薄暗い場所に、地下へと続く階段を見つけた。


「誰だ!!」

「……っ!」


 と、鉄の扉を見つけたリリーが近寄ろうとしたら、突然、背後から声をかけられた。

 弾かれたように振り向くと、鎧をまとったグラスゴーの衛兵が、松明を手にこちらを睨むように見ている。


(見つかってしまった……っ)


 リリーの胸に、大変な焦りが押し寄せる。


「あ、あなたは──」


 対してグラスゴーの衛兵は、リリーを見るなり、驚いたように目を見開いて固まった。


「す、すみません、私は……」


 言いかけて、口をつぐむ。

 松明に照らされた衛兵の顔、どこか見覚えがあったのだ。


(でも、グラスゴーの衛兵に、私が知る人がいるはずはないわ)


 疑問を抱きながらも、リリーは改めて、どうにかしてこの場をやり過ごさなければと考えた。
けれど、どうにも良い考えは浮かばない。

 すると、しばらくの沈黙を破ったのは、


「こ、こんなところに、なんの用です」


 という、衛兵の動揺を押し込めたような声だった。

 衛兵の問いにリリーは慌てて彼から目を逸らすと、背負っていた荷物をおろして曖昧に笑ってみせる。

 
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