冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「ありがとう、ソフィア。突然のことで驚いたのは事実だけれど、王女という立場であれば望まぬ婚姻は仕方のないことだと、きちんとわかっているから大丈夫よ」
ソフィアに、これ以上の心配をかけてはいけない。
そう考えたリリーは曖昧な笑みを浮かべると、気持ちを押し込めるように瞼を閉じた。
今年、十九になるリリーには、いつ婚姻話が舞い込んできてもおかしくはなかった。
だからこそ、リリーもそれなりの覚悟はしていたつもりだし、政略結婚というものに不満を抱いたことも今までなかった。
しかし……それが、まさか自分にとって最低最悪とも思える相手と結婚することになるとまでは、思い至らなかっただけのこと。
「ソフィア……。あなたを困らせるというのはわかっているのだけれど、今晩だけはひとりきりにしてもらえないかしら」
「リリー様、ですが……」
「大丈夫。いくらなんでも、自らの命を絶とうなどとは考えないわ。……ただ、今晩だけは、どうしても〝あの場所〟で眠りたいの。だからどうか今晩だけは、ひとりにしてくれない?」
そう言ったリリーのはかなげな笑顔を見たソフィアは、思わず言葉をつまらせた。
リリーの言う〝あの場所〟とは、城内の広い庭園内の小さな森の奥にある、〝秘密の花園〟のことだ。
色とりどりの花に囲まれたその場所には、その昔、王宮お抱えの庭師が住んでいた小さな隠れ家があり、そのそばには温室と、数本のオリーブの木が植えられていた。
そこは今は亡きリリーの母が愛した場所でもあり、母の遺言によって今でも現在の王宮庭師が定期的に手入れをしている場所でもあった。