冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
まるで秘密の隠れ家のようなその場所が、リリーは好きだった。
幼い頃からリリーのそばにいたソフィアは、何か辛いことがあると必ずリリーがその場所に足を運び、自分の心と向き合ってきたことを知っている。
だからこそ今、リリーがどんな思いで自分にワガママを言ったのかも、ソフィアは痛いほど理解していた。
「……わかりました。けれど朝には必ず、ソフィアがお迎えにあがりますことだけはお許しください」
そう言うとソフィアはすぐにブランケットを用意して、リリーに手渡した。
ブランケットを受け取ったリリーは静かに微笑むと、「ありがとう」とだけ告げて秘密の花園へと足を向けた。
──広い庭園内は、まるでおとぎ話の中の迷路のようだ。
けれど今は月明かりがリリーを目的の場所へと導くように、足元を照らしてくれている。
(ロニーに貰った花冠と、同じように丸い月ね)
そのとき、ふと、今朝のやり取りがリリーの脳裏をよぎった。
同時に、孤児院にプレゼントを届けてくれた〝名も無き贈り主〟のことも思い出す。
(きっと、私がエドガーのもとへと嫁いでしまったら、名も無き贈り主様にお会いするという夢も叶えられないままになってしまうわね)
性別も年齢も、一切の正体もわからない人。それでもいつか必ず会いたいと、初めて強く思った人だった。